絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「そう? でも、私も芽衣さんとお話してると、気が紛れて楽しいよ」
「そういってもらえると嬉しい。ねえ、お互いに無事に生まれたら、ママ友になろうよ」
「え、もう友達のつもりだったよ」
「それはそれ。ママ同士の交流って憧れなんだよね。私、美澄さんみたいにあんまり友達いないからさ。それに、同室の人と仲良くなっても次々に卒業していくしね」
たしかに芽衣のところにはあまりお見舞いに来る人がいない。二週間が経過しても、旦那さんらしき人の姿もなかった。彼女が言うには、彼女の夫は単身赴任中なのだという。職業柄、なかなか戻ってこられないらしい。
そうしている間にも、日々、同室の人たちが何人か分娩室に運ばれたあと、別の病室に母子共に移動することになり、入れ替わりが激しい中、美澄と芽衣だけが変わらず同じベッドにいた。
ほとんど動かないようにしている芽衣のベッドに美澄がお邪魔してお喋りしていることもある。今日もそうして雑談をして、そろそろベッドに戻ろうとしていたときだった。
芽衣が急に顔を歪め、お腹を押さえてうずくまった。
「芽衣さんっ、どうしたの。大丈夫?」
「……お腹が。でも、平気……ちょっとだけだから」
そういう彼女の顔面は蒼白だった。小さく呻いては呼吸がどんどん荒くなっていく。
美澄はハッとして慌ててナースコールを押す。すぐに看護師が二名やってきて芽衣の様子を確認したあと、彼女を車椅子に乗せて運んでいった。そのとき、足から血が滴っているのが見えて、美澄の顔からも血の気が引いた。
『あ、気を遣わないで。もうすぐ二十二週を越えるから、そしたら美澄さんと同じ仲間になれるから待ってて』
そんなふうに言っていた芽衣のことが思い浮かんだ。どうかお願い無事でいて……美澄は手を握りしめ、願っているほかになかった。
――その日、結局、芽衣は戻ってこなかった。
朝目覚めると、看護師たちがベッドを整理しているのを見て、だめだったのだと、美澄は察した。
(芽衣さん……)
美澄の目に涙が浮かぶ。しかし零れてしまわないように必死に堪えた。芽衣は同情なんかされたくないだろう。二度も絶望した彼女に、今の自分がかけられる言葉なんてない。
美澄はすっかり落ち込んでしまい、それから数日はカーテンを閉め、ベッドに寝たまま何もする気になれなくなってしまった。
「そういってもらえると嬉しい。ねえ、お互いに無事に生まれたら、ママ友になろうよ」
「え、もう友達のつもりだったよ」
「それはそれ。ママ同士の交流って憧れなんだよね。私、美澄さんみたいにあんまり友達いないからさ。それに、同室の人と仲良くなっても次々に卒業していくしね」
たしかに芽衣のところにはあまりお見舞いに来る人がいない。二週間が経過しても、旦那さんらしき人の姿もなかった。彼女が言うには、彼女の夫は単身赴任中なのだという。職業柄、なかなか戻ってこられないらしい。
そうしている間にも、日々、同室の人たちが何人か分娩室に運ばれたあと、別の病室に母子共に移動することになり、入れ替わりが激しい中、美澄と芽衣だけが変わらず同じベッドにいた。
ほとんど動かないようにしている芽衣のベッドに美澄がお邪魔してお喋りしていることもある。今日もそうして雑談をして、そろそろベッドに戻ろうとしていたときだった。
芽衣が急に顔を歪め、お腹を押さえてうずくまった。
「芽衣さんっ、どうしたの。大丈夫?」
「……お腹が。でも、平気……ちょっとだけだから」
そういう彼女の顔面は蒼白だった。小さく呻いては呼吸がどんどん荒くなっていく。
美澄はハッとして慌ててナースコールを押す。すぐに看護師が二名やってきて芽衣の様子を確認したあと、彼女を車椅子に乗せて運んでいった。そのとき、足から血が滴っているのが見えて、美澄の顔からも血の気が引いた。
『あ、気を遣わないで。もうすぐ二十二週を越えるから、そしたら美澄さんと同じ仲間になれるから待ってて』
そんなふうに言っていた芽衣のことが思い浮かんだ。どうかお願い無事でいて……美澄は手を握りしめ、願っているほかになかった。
――その日、結局、芽衣は戻ってこなかった。
朝目覚めると、看護師たちがベッドを整理しているのを見て、だめだったのだと、美澄は察した。
(芽衣さん……)
美澄の目に涙が浮かぶ。しかし零れてしまわないように必死に堪えた。芽衣は同情なんかされたくないだろう。二度も絶望した彼女に、今の自分がかけられる言葉なんてない。
美澄はすっかり落ち込んでしまい、それから数日はカーテンを閉め、ベッドに寝たまま何もする気になれなくなってしまった。