ライム〜あの日の先へ
ーー零次くんが、ハルトくんのパパだった。

その事実が、鈴子の心をかき乱す。

バカみたいにずっと好きだった。
王子様が迎えに来てくれるシンデレラになりたかったわけじゃないけれど。それでも、『もしかしたら』って、かすかに期待を抱いていたことも事実。

親友の妹ながら彼を慕っていた女の子のことを思い出して、また会いたいと思ってくれるかも、なんて。

会いたいと思うなら彼の力を持ってすれば、鈴子のことを見つけることはできるはず。そうなればいくら隠したところで、鈴子が子供を産んだことも知ることになるだろう。


だけど、彼はそうしなかった。
つまり、彼にとって鈴子はただの過去なのだ。会いたいなんて探すこともないほどに。

ーーそうだよね。
だって零次くんはとっくに幸せな家庭を築いていた。

私のことなんてもう忘れているだろう。


それでも顔をあげることは出来なかったし、彼の顔を見ることも出来なかった。


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