ライム〜あの日の先へ
小さく笑ってコーヒーを口に運ぶ一成に、零次はハッと気づく。

一成のこの笑い方。
両親の事件で批難を受けたときに相手に見せる笑顔。相手の気持ちを逆なでしないように、感情の読めない笑顔でその場をやりすごす。あの作り笑いだ。

「そんなに嫌か?俺と会うのは」
「……長く友達をしていたせいですね。バレましたか。
凛のそばにいてやりたいんです。
こちらからはお話したいことは何もありません」
「あの子は鈴子が産んだのか?相手は?離婚したのか?お前はそれを許したのか?
それに、どうしてお前は五嶋商事を去った?俺を見捨てたのはなぜだ?いつか二人で会社起こして金持ちになろうって夢は忘れたか?」

矢継ぎ早に降ってくる質問。だが、一成はあの作り笑いを浮かべたまま、答えない。

「答えてくれよ、一成」
「知ってどうするんです?全て終わったことです。もう忘れてください」
「俺にとっては終わっちゃいない。お前との友情も、鈴子への恋情も、アメリカを発ったあの日から止まったままだ」

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