ライム〜あの日の先へ
第一章 再会

鈴子、24歳の初夏。


横断歩道は赤信号。
足を止めてぼんやりと頭上を見上げれば、眩しいくらいの青い空だ。

「あ、ひこうき!」

凛(りん)の小さな指が空を指差す。

「あのひこうき、どこにいくのかなぁ。アメリカかな」

青空の高いところをゆうゆうと横切る流線形の飛行機は、太陽の光を浴びて輝いている。
まるでそこにスポットライトが当たっているかのようだ。

鈴子は不意に客室乗務員を夢見ていた頃を思い出し、チクリと胸が痛んだ。


ーーあの頃、こんな未来は想像すらしていなかったな。


凛のぷくぷくした暖かな手が、きゅっと鈴子の手を掴む。

「もしかしたら、パパ、のってるかなぁ」
「……どうだろうね」
「おーい、パパ!りんはここだよぉ」

無邪気に飛行機へと手を振る凛。
ちょうど信号が青になり、鈴子は凛の手を引いて歩き出す。

凛は通っているプリスクールで、『パパ』という存在を知った。
だが、凛にパパはいない。

凛にパパはいないのだとは言えなかった。
どこにいるのかと問われるたびに、『高いところにいるんだよ』と言ってきた。
だから凛は、背の高いビルや、鉄塔、飛行機を見ては『パパがいる』と思っている。
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