ライム〜あの日の先へ
一成と零次は小学校からずっと同じクラス。誕生日も3日違い。名字も「もちだ」と「よしだ」で、生年月日順でも50音順でも並び順が隣だった。
いつもきちんとした服を着て、勉強も運動も良くできた一成。


祖母が亡くなって生活がすさんでいた零次は一成のことがあまり好きじゃなかった。その優等生面が気に入らなかったのだ。ただ、いつも隣り合わせの腐れ縁、しかも家も近くて登下校も一緒。全く関わらないことは出来なかった。


忘れもしない、北風がとてつもなく寒かった冬のあの日。
一成が学校を休み、零次がプリントを届けに行くことになった。

面倒くさいが帰り道なのだから仕方ない、と一成の家の近くまで来て、異常事態に遭遇する。

何台ものパトカーが一成の家の前に止まっていた。しかも近所の人たちが野次馬となってその様子を伺っている。

「亡くなったみたいよ」
「ご主人も刺されたみたい」

そんな、テレビのニュースでしか聞かないような言葉があちらこちらから聞こえてきた。

ーー望田くんは?望田くんはどうなったんだろ。まさか、死んだりしてないよね?

一成はなんらかの事件に巻き込まれたのだろうか。大丈夫なのだろうか。
零次は急に不安になった。
< 40 / 231 >

この作品をシェア

pagetop