ライム〜あの日の先へ
それから、三年後。

塾に通わず、二人で一緒に勉強を重ね、一成と零次は地元でも有名な進学校に進学していた。
大学受験も、自分たちだけで。
第一志望を家から通える国立大学に定め、二人で励まし合いながら頑張った。

だが。
結果は一成だけが国立大学に合格。
零次は国内でも最難関と言われる私立大学に合格していた。

「おれ、大学進学やめる。就職するよ。どうしても大学に行きたいわけじゃないし」

零次は母親に高額な費用を払ってほしいとは言えなかった。しかもその私立大学は家からは通えない距離にある。

「零次くん、何か方法はないの?」

心配そうな鈴子。鈴子ももうすぐ小学校卒業。ずいぶんと背が伸びて大人びてきた。
もう、零次や一成の助けがなくても、鈴子自身でなんでもできる。

ーー巣立ちのチャンスかもな。

いつまでも一成と鈴子に依存して生きていくわけにはいかない。


「まぁ、俺には一成と違って妹も家族も、守りたいもの何もないし。
俺の名前通り、ゼロの次なんて何もない。ゼロは何掛けたってゼロだしな。ま、死なない程度に適当にやってくよ」
「違うよ、零次くん。ゼロのつぎはイチに成るんだよ。おにいの名前『一成』と一緒。足し算すればいいの。
大学行きたいって言ってたじゃない。勉強したいって」

鈴子の言葉が、零次の心にストンと落ちる。

ーーあんたはゼロ。存在しないってこと。ゼロには何掛けたってゼロ、次なんて無いって意味でつけた名前。

母にそう言われて育った。自分には何もない。未来になんの期待も持てないと。

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