ライム〜あの日の先へ

再会

※※※

一成は大学を卒業後、日本有数の大手総合商社に就職した。すぐにでも鈴子と家を出たかったが、彼女の学費や生活費を考えたら当時の一成の給与ではまだ無理だった。

入社して3年勤めた後、アメリカへ行くことになった。その頃には二人で暮らせる程度の収入も見込め、貯金も出来ていた。

「これでやっとこの家を出れる。鈴子、一緒にこの街を出よう」

鈴子は、母の起こした事件のせいで周囲にいつも後ろ指をさされながら暮らしてきた。いじめられ、無視され、友達は出来なかった。
父は何もしてくれない。鈴子の存在すら忘れたかのよう。唯一の味方は一成だけだった。

ーー自分を刺した女の娘だから、しかたない。

鈴子は諦めていた。
生活費を出してくれるだけありがたい。

そんな生活を断ち切れる。そんな期待に心が膨らみそうになるのを、慌てて押さえた。

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