ライム〜あの日の先へ
鈴子は兄と一緒に渡米し、アメリカの大学に進学した。
アメリカでの生活は楽しかった。何より、両親が起こした事件を知る者がいない。やっと心が解放されて兄と二人、充実した毎日を送っていた。



あの日、大学生の鈴子は課題に追われていた。
明日が提出日。徹夜覚悟だったのに、いきなり酒に酔った兄が若い男性を家に連れてきた。

深夜だというのに家の中が一気に騒がしくなる。
鈴子は勉強に集中できず手を休め、リビングをのぞいた。

兄が連れて来たのは、まだ若く背の高い男性だった。
スッキリと短めの黒髪を程よくまとめていた。彫りが深く、顔立ちがはっきりしている。
体にフィットした細身のスーツがよく似合っている。

鈴子好みの、スマートでカッコイイ大人な雰囲気の男性。
単純なもので、苛立ちがスッと消える。
しかも、なんとなくどこかで見たことがあった。


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