社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「昼休み、すぐに出て買いに行ったら買えたって子がいたわよ」
と言う律子に、

「じゃあ、行きましょうよ。
 車出してよ」
と坂巻が言う。

「十二時ちょい前に、そっと抜け出してきなさいよ。
 わかったわね、愛人っ」

「え? は?」

「私が車出すって言ってんのよっ。
 遅れたら、置いてくわよっ」

 は、はいっ、と千景は慌てて返事をする。

 乗せてってくれるとは親切なカツアゲだ、と思いながら。



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