社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 坂巻が律子に、
「それにしても、あんたが社長を狙ってたとはね。
 っていうか、ちょっとした甘いものと引き換えに社長を譲り渡してもいいの?」
と素朴な疑問を投げかけている。

 いや、坂巻さん、どっちの味方なんですか、と千景が思ったとき、律子が言った。

「そりゃ、社長の方がいいけど。
 手に入りそうにないのなら、せめて、手に入りにくい甘いものでも欲しいじゃないの。

 そうだ、あんた、昼に買ってきなさいよ。
 じゅ寿庵のマカロン。
 総務のお茶菓子に」

 カツアゲだっ。
 ここ会社なのにっ。

 学校でもされたことないのにっ、と千景は怯える。

「あら、いいわね。
 私も食べたいわ、マカロン。

 編纂室でも配ってよ」
とあっさり坂巻も便乗する。

 カツアゲだっ!
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