社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 買う予定になかった『三日月の夜』まで買ってくれたし。

 このままでは、私が真柳さんをパシりにした挙句に、カツアゲした感じになってしまう。

 なにか恩を返さねば、と思う千景は頭の中で武者小路を痩せさせようとした。

 武者小路が回し車の中で走っている。

 実家にいるハムスターの回し車だ。

 いつまでも真横に立っている千景に気づき、振り向いた武者小路が言った。

「……なんだかわからないが、俺を微笑ましい目で見るのはやめろ」

 すみません、と謝り、千景は、もらったお菓子を手に席に戻った。



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