社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 

「いや~、わざわざ乗ってくださらなくてもよかったんですよ~」

 乗ってみたら、別に物悲しげではなかった運転手さんが笑って言う。

 いえいえ、でもですね。
 なんとなく……と思いながら、千景は、ははは……と笑った。

 もう運転手さんと三人で出社するのが当たり前な感じになりつつあった。

 まあ、とりあえずダッシュした身体にエアコン心地いいな、と思ったとき、将臣が言った。

「そうだ。
 八十島がいるカフェに行こう。

 三人で出社すれば、周りの目もごまかせるだろう」

 待ってください。
 なにもごまかせない感じがします。

 それどころか、私はイケメン二人に囲まれて出社することになり。

 さらに真柳さんとかに睨まれて。

 睨まれて……

 なんだかんだでお菓子をおごられそうな気がしますね。

 そうだ。
 真柳さんにおごり返さなければ……と千景が思ったとき、将臣が訊いてきた。

「そういえば、お前、まだ写仏してんのか」

 渋い趣味だな、と言われる。
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