社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
八十島と嵐山じゃないか。
武者小路は二人の姿に気づき、廊下で足を止めた。
妙な組み合わせだな。
なにしてんだ、と思う。
嵐山は八十島の好みのタイプではないと思うが。
遠目に見ていると、ちょっといい雰囲気にも見えた。
八十島、なんで嵐山に近づいてるんだ?
さては、嵐山から編纂室のなにかを訊き出そうと……?
と思ったあとで気づく。
いや、編纂室のなにをあいつが知りたがると言うんだ。
ここで取り扱っているのは、調べれば誰でもわかるこの会社の歴史や。
ちょこっと載せようと思っている、長年勤めている人たちの、あったかエピソードくらいのものだ。
渋い顔をして立っているこちらに気づいた八十島が、千景に、じゃあな、と言うのが聞こえた。