社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 


 社史編纂室。
 ドラマや小説なんかでは、場末の部署みたいに言われているが、そういうわけでもない。

 今回は会社の100周年記念行事の一環として作られる、記念誌も兼ねた社史なので、会社も気合が入っているようだった。

 社長交代のタイミングでもあるしな、と武者小路は思う。

 確かに、
「え~、編纂室。
 島流しじゃん」
とかいう阿呆どももいるようだが。

 この営業のエリートだった俺がここにいることからも、ここが場末でないことは証明されている。

 と思っているのだが……。

 武者小路は目の前で機嫌よく、朝の紅茶を飲みながら、アンケートの集計をしている女を見た。

 新入社員。
 なんかぼーっとしている。
 入社早々、社長を狙ってる。

 そんな即戦力として使えなさそうなポイント、三点セットの女を新人として送り込まれたりすると、ちょっと不安になるな。

 そんなことを考えながら、仕事をしていると。

 その使えなさそうな新入社員、嵐山千景はアンケートを見ながらいきなり笑い出した。

「……どうした?」
と訊いたが、

「いえ」
と笑顔で言う。

 どうしたっ!?
と武者小路はまだ心の中で思っていたが。

 千景はそのまま集計を続けている。
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