社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 


「あ、千景が穴蔵から出て来た」

 千景が社食に行ったら、先にテーブルについて食べていた同期たちがそう言い笑った。

 半地下に編纂室があるからだろう。

 あそこは気楽そうでいいね、とみんな言うが。

 ……確かに、ほんとうに気楽だ。

 全員黙々と自分の仕事をしていて。
 特に人間関係のトラブルもない。

 たまに他の部署を覗くと、いつも忙しそうだし。
 ピリピリしているところもあって。

 編纂室でよかったな~としみじみ思っている。

 同期たちと合流し、楽しく食事をしていると、将臣が八十島とともに社食に現れた。

「あ、やば。
 もう出ないと」

「ほんとだっ」
と事業部の二人が突然、立ち上がる。

 今日は昼からイベントの準備で外に出るのだが。

 今、先輩が社食を出ていくのが見えたという。

 遅れをとるわけにはいかないと、二人は急いで出て行った。

 ……というわけで、千景の前の席が空いてしまった。
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