【完結】和菓子職人との恋は、甘いようで甘くない?
「イヤか?」
ううん、イヤな訳がないよ。
「じゃあ……ひらがなで゙ゆづぎって言うのはどうですか?」
私がそう言うと、悠月さんは驚いたのか「えっ、俺!?」と言ってきた。
「はい。この和菓子は、悠月さんみたいに温かくて、でも甘さの中にも酸味があって、まるで悠月さんみたいだなって思って」
悠月さんは同じ和菓子職人として、見習いの子には時々厳しく指導しているのを見かけるけど、それだって悠月さんの愛情なのかなって思うから。
同じ和菓子職人として、ちゃんと和菓子を好きになってもらいたい。和菓子作りに誇りを持ってほしい。そんな気持ちがどこかにあるのかなって、なんとなく思ってたんだ。
「菜々海、俺のことよく見てるんだな」
「え?……そう、ですか?」
「ああ。 せっかく菜々海が付けてくれたんだ、このお菓子はゆづきでいこう」
悠月さんはそう言って、私に笑ってくれた。
「でも、いいんですか?」
「いいんだよ。この和菓子の名前には、ゆづきがぴったりだよ」
なんでこんなに、悠月さんは優しいのだろう? そういえば入って間もない私に、悠月さんは「わからないことがあれば、何でも俺に聞いてくれ」と言ってくれたな。