【完結】和菓子職人との恋は、甘いようで甘くない?


「あの時、菜々海なぜか泣いてたよな」

「だってあれは……その、悠月さんがすごく苦しそうだったから……」

 悠月さんが無理してることを、私たちはみんななんとなく分かっていた。
 だけどみんな何も言わず、悠月さんも「大丈夫だから」と言っていたからか、そこまで気にしていなかったのかもしれない。

 だからあんなに無理して……。そんな悠月さんのことを心配するのは、当たり前のことだ。

「でもあの時、俺はすごく嬉しかったけどな」

「……え?」

「菜々海がそんなにも俺を心配してくれてるんだと分かって、なんていうか……無理は良くないなって、本当に思ったよ」

 悠月さんはなんとなく、恥ずかしそうだったけど、その気持ちが私には本当に嬉しかった。

「あの時菜々海がずっと寝ずに看病してくれたおかげで、俺はこうして頑張ることが出来てる。 菜々海には本当に感謝してる。ありがとう」

 やだ、もう……。そんなこと言われたら、私、私もう……。

「えっ!? お、おい!なんで泣くんだよ!?」

 泣かずにはいられないよ……。こんなに嬉しい言葉言ってもらってるのに。
 本当に嬉しい。私、今すごく幸せだ。
< 16 / 34 >

この作品をシェア

pagetop