手を伸ばした先にいるのは誰ですか





ずるずるずるっ…

「っ…あぶっ…な…頭打ってないか?美鳥?」

シンクを背にずるずると腰を落とした美鳥の後頭部に慌てて手を添えると、俺の手の甲がガンガンと打ちつけられたが俺はかまわない。叱られた子どもが部屋の隅で小さくなるように膝を抱えた美鳥は

「…ごめんなさい…朱鷺…私…間違っていたの」

そう言い左目からツーっと一筋の涙を流す。見とれる美しさの滴を痛む手の甲で拭い

「うん?何を?」

俺も床に腰を落とした。

「…恋とか…愛…とか…頭で解読していろいろ言ったけ…ど…私…朱鷺がいい…の…朱鷺とデートもしたい…って思ってしまう…朱鷺の側に…誰かがいるって…考えるのは嫌…」
「うん、大丈夫…デートもするし、俺の隣には美鳥しかいない」
「…朱鷺……朱鷺じゃないとヤダ…」
「ああ…」
「私は…とっくに…ずっと朱鷺を…愛してる…」
< 183 / 268 >

この作品をシェア

pagetop