手を伸ばした先にいるのは誰ですか
09





「美鳥…ん、おいで…抱きしめさせて…そのままじゃ足が邪魔」
「…ごめん…私の足が長くて…ふふっ…」
「俺の長さがうつった?」
「ずっと一緒にいるからね…」
「ん、床も冷える…抱っこでいいか…」
「…わっぁっ…っ…」
「おっと…美鳥、泣いて笑って忙しいな」
「朱鷺のせいだもん」
「だな…」

朱鷺は私を抱き上げて歩きながらチュッ…チュッと二度軽く口づけソファーに座る。膝の上へ私を向かい合わせに乗せると

「美鳥、今すぐにベッドへ行きたいところだが…聞いて…美鳥がこれから今日のように悩むことのないように…何も心配せずに俺と愛し合っていられるように、堂々と仕事もしていられるように、聞いて」

と私の背中をゆっくりと撫でた。

「うん」
「一番大切なのは美鳥だからな。悪いことをしているわけじゃないが雑音は気持ちのいいものじゃない…まずは美鳥が亨トオルさんの子であると世間に知らせる」

亨さんは戸籍上の父だ。

「どうやって?」
「亨さんと一緒にパーティーか茶会に出てくれ。そこは亨さんとも相談する」
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