王女の選択

椅子を引っ張ってきて、ジェラルドの隣に座ると彼の肩に腕をかけた。

「ここからは、一人の友人として話をさせてくれ。気休めに聞こえるかもしれないが、カーラ殿は必ず回復する。彼女が目を覚ますまで、しなければならないことが山のようにあるはずだ。・・・ジェラルド。彼女が抱えてきた悲しみをこの城から払いのけるのがお前の役目ではないのか。それができないというなら・・・」

ほんのわずか俯き、ヴィクトーはすっと息を吸い込むと、静かに口を開いた。

「俺がその役割を引き受ける」

ジェラルドは自分でもびっくりするほどヴィクトーの言葉に動揺した。
引き受けるとは・・・・どのことを言っている?

厩舎での二人を思い出す。
あの時、ショックと嫉妬のあまり思わず剣の柄を握りしめたほどだ。
ヴィクトーはリュカのようにそこかしこで女性に甘い言葉をかけるような男ではない。
誠実で、誰よりも頼りがいがある。
リュカはよくジェラルドのことをちゃかしてくるが、ヴィクトーの人気をクロエが話しているのを幾度となく聞いている。

「ヴィクトー・・・まさか・・・」

ヴィクトーはフッと笑うと見やった。

「・・・と言われたら、お前の面目が丸つぶれだろう。忘れるな。お前は国の主だ。しっかりしろ」

ヴィクトーはジェラルドの背中を叩くと、王都に関しては任せてくださいといつも通りの口調に戻り、そのまま部屋を後にした。
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