王女の選択

3

父との面会を終え、食事の準備を急ぐようステラを促した後、急いで体を清めた。
体中が悲鳴を上げていたが、自分も食事の準備を手伝わなければならない。ルドルフ国王が国費を戦いに費やすようになってから、城内での雰囲気がどんどん変わってしまい、召使の数も減っていった。社交界に出ていないカーラはもう何年もドレスを新調しておらず、今来ている服も流行遅れの質素なドレスだった。幾度となく洗濯されたそのドレスは色も落ち、身に着ける装飾品も数えるほどしかない。
自分のドレスを見下ろしてチクリと女心が傷ついたが、このような状況で着飾っても仕方がない。小さなため息をこぼしたカーラはまっすぐと大広間に向かうと、ろうそくに火を灯し始めた。

「カーラ様。今日は無事に帰還されたカーラ様のためにお好きな鴨料理を用意してあるそうですよ」

「まぁ!久しぶりのごちそうね」

ステラの明るい声を耳にし、カーラは今日初めて自然な微笑みを浮かべた。

父からは丁重におもてなしをするように言われている。
もちろん、敗者はセルドウィック王国なのだから粗相がないようするのは当たり前だしジェラルドに従うしかないのだが、王女としての誇りまで失いたくはなかった。そして、例え敵であっても卑怯な手を使いたくない。侍女の一人が摘んできた野花をテーブルの真ん中に飾り始めた時、ジェラルドが静かに階段を下りてくるのが見えた。カーラはちらっとジェラルドを見たがすぐに目をそらし飾りつけに専念した。召使が運んできたプレートも次々と並べていく。

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