こんなのアイ?
愛実の話から彼女が人生の過渡期にいると感じた。
過渡期…古いものから新しいものへと移り変わる中間の時期。物事が確立されず、動揺している時期とも言えるだろう。俺は彼女を失うまいとがむしゃらに動いた間に、そして週末ごとに向かい合う間に、自分の彼女への気持ちは再確認出来ている。二度と離れない。
一緒に暮らしたいと伝えたあと
「愛実が人生において多忙且つ移り変わりの時期を迎えるなら支えたいし、近くでその姿を見ていたいと思う」
そう付け加えると彼女は大きな猫目を丸く見開き、その目を潤ませた。
「悠衣は社長さんで忙しいはずなのに、時間にも心にも言葉にも…すごく余裕があるように見えるのは何故かな?」
「ふっ…愛実の目にそう映っているなら嬉しい」
「映ってるよ…そして、それに安心感を覚えているのは事実」
「愛実にだけそう思ってもらえれば、他の者はどうでもいい」
「悠衣、デザート…お寿司いただきます」
「ははっ…いくらでもどうぞ」
目を潤ませたかと思えば肉寿司。最近、愛実の遠慮がなくなってきたように思うことも度々あり、いろいろな表情を見せてくれるので一緒にいて飽きないどころか楽しい。ずっと一緒にいたい。だから一緒に暮らしたいと思う。
彼女のマンションへ送って行く途中
「久しぶりに夜の電車に乗った」
そう笑いながら愛実が俺のコートの袖口を小さく握りしめた。その手をそっと握りしめると彼女もきゅっと握り返してくれる。その夜はもう何も話さず、ただ手のひらから感じる…久しぶりに感じる愛実の体温だけを感じ、いつもよりゆっくりと歩いた。