こんなのアイ?






「いや、不動産売買なんて高額が動く話に愛実一人でなんて考えると怖いからな。感謝する」
「愛実のしたことを克実がどう受け取ったかわからないが…兄思いの妹の気持ちを受け取ってやって欲しいと思うよ」
「ああ、しっかり受け取った。5年であの通帳の金額を増やして愛実に返してやる」
「頼もしい兄貴だな、愛実」

 食べ終わりキッチンに立とうとしていた私に悠衣が言う。

「無理しないでよ。金額を増やす必要もないし…あ、忘れてた…克実、武田先生が来週の打ち合わせの時に合わせてクリニックに来るって」
「わかった」
「武田先生って武田税理士事務所?愛実の務めてた」
「そう、クリニックの財務税務関係お願いするから」

 話しながら悠衣も克実もさりげなく片付け始める…出来る男たちだ。

「ワインだけ置いておこうか?良かったらチーズ出してね。クラッカーは…はいこれも良かったらどうぞ」
「愛実、食器あとで食洗機に入れるからいいぞ」
「ありがとう」
「悠衣、ブレントのこと…クリニックで働くこと悪いな」

 克実が悠衣のグラスにワインを注ぎながら伝えると

「悪いことはないだろ?やましいことは何もないだろ?克実にしても、ブレントにしても」
「もちろんないが」
「なら、いいじゃないか。ブレントがいい奴なのは良く知ってる。心配はしていないし…万が一、億が一、何かあっても愛実は俺が手離さない。手離せない。それだけだ」

 悠衣はワイングラスを掲げながら優雅な微笑みを見せた。
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