こんなのアイ?




 沈黙の愛実はどう断るかよりも何をどう話すか考えているのかもしれないな。

「…男の人と関わりたくないの」
「理由は?」
「…」
「ストーカー?浮気?DV?」
「…DV以外はどっちもある」

 とても小さな声は周りの家族連れに消されてしまいそうだ。

「マンションの男は?」

 答えるつもりはないらしくゆっくりと首を横に振る。ちょっと詰めるか…

「百貨店でも見かけたんだが…バーの男、百貨店の男は同一人物…マンションも?」

 少し間をおいて、仕方なく頷く首を縦に振った愛実をもう少し詰める。

「初めてバーで見た時の愛実はマリッジリングをしていたが?」

 驚いた顔で俺を見た彼女の瞳が大きく揺れており地雷だったかと少し後悔する。

「過去に何があったかわからないが、俺は今愛実をもっと誘いたいと思っているし他にそんな女はいない。だからまたすぐ誘うぞ。昔は昔だというには愛実は若いけれど…今までのしょうもない男と同じ男に見られるのは心外だ」
「…なんで私?おかしいでしょ?悠衣は私よりすごく大人な社長さんでしょ?すんなり‘ハイ’ってついて行かないわよ」
「それは暗に俺がおっさんで眼中にないと言っているのか?社長だったら愛実を誘えない?」

 面倒そうにため息を吐いた愛実はもう少しで戦意喪失しそうだな。

「何も今すぐ付き合えとかセックスすると言っている訳じゃない。その時になったら…こんなファミレスじゃなくどこかで甘く口説いてやる」
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