こんなのアイ?




 ファミレスでふーっして、あーんしてって手を掴んでる時点でもう十分に甘いと思うんだけど?今ここで何を言っても無理そうね。誘われたら二回に一回くらい紗綾も一緒に参加するという感じでいいか…

「受け入れてくれた?」
「うんと言わなきゃ帰れなさそう」
「まあ、今はそれでいい」

 悠衣は長い腕をこちらへ伸ばしたかと思うと私の頭をくしゃりと撫で立ち上がった。

「もお」

 乱れた髪を手櫛で直しながら彼を追う。支払いをしてくれた彼に礼を言いながら駐車場の車まで来たとき何となく隣の見慣れないオレンジの建物が目に入り、何だろうと一瞬立ち止まった。

「寄るか?」
「ううん、何だろうって思っただけ」
「24時間スーパーだな。実家の近くにもあるからあの色で覚えた。行ってみるか?車の時に買い物する方がいいだろ?」
 
 昨日の荷物を持った私の姿を見たからか、そう言って笑う悠衣に

「ありがとう。ちょっとだけいい?」

 とお願いして車を移動させスーパーに連れて行ってもらう。

「流行ってるね」

 食品のみの小規模なスーパーだが、流行っているせいか野菜もフルーツも新鮮そうだ。カートを持とうとする悠衣をそんなに買わないからと止めるとカゴを持ってくれる。‘Diamante Kai’の社長にそんなことさせているなんて罰があたりそうだ。彼は、急がなくていいと言うが足早に買い物を済ませ、買った物を袋に入れていると

「あら…あなた…」

 とすぐ隣で女性の声がした。
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