こんなのアイ?




 俺は早速翌日動いた。十分考える時間は与えた。これ以上一人で考える時間は無用だ。年末近くの今日、仕事はまだあるが明日早く出ればいいだろ…まず先に愛実だ。彼女のマンションの下から電話をかける。

‘…はい、悠衣?’
「ああ、降りて来い」
‘へっ?’
「ぷっ…どこから声出してんだ?」
‘…’
「膨れんなよ、可愛いだけだ」
‘…悠衣やだ…’
「ん?見透かされるのが怖い?自分が変わるのが怖いか?」
‘…ほら…やっぱりやだ’
「怖けりゃ俺にしがみついていればいいし、どんな風に変わろうが受け止めてやる。だから愛実…逃げるなよ」

 少しの沈黙のあと諦めたような小さなため息が聞こえ

‘あのね…もう出られないの…’
「なぜ?早くしないとアイスが溶けるぞ」
‘アイス?’
「アイスクリーム」
‘もうお風呂に入っちゃったの…’
「すっぴん歓迎、くっくっ…出られないなら仕方ないな、俺が上がる」

 今夜は車でアイスを食べながら話をするくらいに思っていたが風呂上がりか…楽しみだ。部屋へ行くと上下クリーム色のボアフリースの部屋着か寝間着にまだ湿った髪、そしてすっぴんの愛実がドアを開けてくれた。

「…こんばんは?」

 うつむき加減で恥ずかしそうに言う彼女の髪を一束すくい

「まだ濡れてる。乾かせよ」
「…アイスが溶ける」
「ははっ…ほんと愛実…可愛いのな」

 アイスを持たない手で軽く抱き寄せた。なぜこんなに可愛い?
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