こんなのアイ?
駆け下りてきたブレントはさっと私の腕を取ると自分が一段下を下りるように支えてくれる。
「ありがとう。ここで大丈夫」
店から出たところではっきりと彼に伝える。
「上に戻ってブレント…二人も抜けるのは良くないし」
彼は私の顔に手を添えると
「熱あるんじゃない?送るよ」
「本当に大丈夫。タクシーで帰るし家にはお薬もあるの」
「克実に連絡する?」
「ううん、しないで」
「愛実…僕とずっと会ってくれなかったし今日も二人になりたくないようで…避けてる?」
真っ直ぐ見つめてくるブレントを頭痛をこらえてしっかりと見つめ返す。真剣に想いを伝えてくれた彼に真剣に答えなくてはならない。ぞわっと寒いのには気づかぬふりで声を出す。
「ごめんなさい、ブレント。こんな風に伝えるのは申し訳ないんだけど…ブレントと同じ想いを返すことは出来ない。ブレントの軽快な会話も、みんなに優しい…本当に根っから優しいブレントも好きだけど克実の好きと同じなんだと思う」
ブレントは身じろぎひとつせず私の言葉を聞き終えたあとも動かない。私も今動き言い逃げになるような無責任なことは出来ない。嫌な寒気を背中に感じながら真っ直ぐ彼を見つめた。
「タクシーに乗るところまで送らせて」
彼はそれだけ言うと私の背中に軽く手を添え通りに出る。そしてすぐにタクシーに乗せてくれドアを閉める前に
「本当に克実に連絡しないの?」
「うん、抗生剤持ってるから」
「…悠衣には?連絡する?」
「えっ…」
咄嗟に言葉が出なかった私にふっと微笑み、またねとブレントはドアを閉めた。