こんなのアイ?





 シートに凭れ目を閉じる。

 ブレントと悠衣は真っ直ぐに気持ちを伝えてくれた。まだ悠衣に同じ想いを持てるとも思えていない。でも今はそれでもいいから一緒にいると…そう決めたならブレントに甘えるべきではない。

 マンションに着くと真っ先に薬を飲む。休み休み、ハーフアップにしていた髪をほどき化粧を落とし顔を洗う頃には足に力が入りづらい。洗面所から寝室によたよた移動しながらワンピースを脱ぎタイツを脱ぐ。どれだけ時間が掛かるんだ…スリップ1枚になったところでバッグの中のスマホが鳴る。もういいや出ないでおこうと思うがしつこく鳴り続ける音が頭に響く。手探りで電源を落とすと今度はドンドンと玄関のドアが叩かれると同時にドアのインターホンが鳴る。誰?エントランスじゃなくここまで来ているなんて…怖い。

「愛実…愛実、聞こえる?」

 悠衣?ドアの向こうから悠衣の声がするのでインターホンで確認する。

「…悠衣?」
「今すぐ開けろ」

 低い声が聞こえるが

「今日はごめんなさい…また今度にして」
「ごちゃごちゃ言わないで開けろ。どうせまた風邪がうつるとかしょうもない事考えているんだろ?とっとと開けろ、バカマナ」
 
 お隣に恥ずかしいくらいはっきりとバカマナと言わないで欲しい。よたよたと玄関に行き自分の格好を思い出し掛けてあるコートをとりあえず羽織り解錠すると扉が大きく開かれふらつく。
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