極甘結婚はおあずけですか?


確かに幼なじみで、幼い頃からの付き合いだけど――、恥ずかしげもなくサラリと言ってくのだから私の心臓がもたない。



「そもそも、その辺で出かけたらデートどころじゃなくなるだろうしな」



それはすぐに想像できた。

千紘はプロ野球選手だ。二軍にいた時もファンはいたし、一軍に上がった今はもっといるだろう。


買い物なんか行った暁には、周りを囲まれて動けなくなるに違いない。



「だから、これでいいんだよ。結乃とくっついていられるんだから」



千紘はそう言って、満足そうに私のお腹に回している手に力を入れた。


普段は球団の寮に入っているから、オフの時くらいしか私の家に来ることはない。

そういう私も、高校卒業と同時にプロになった千紘を追いかけて、こっちの大学に通いながら一人暮らしを始めた。

もちろん球場の近くの家を借りている。


今は近くの病院で理学療法士として働きながら、いつか千紘のいる球団で働けるよう奮闘中だ。

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