空の表紙 −天上のエクレシア−
…正直、洞窟で兵隊さんに見付かって
ホッとしたんだ。


いつの間にか乗り合い馬車に
紛れ込んで付いて来てたロルカは、
山道の途中で案の定足が痛いって泣くし、
『お前の大嫌いな虫捕り行くんだぞ!』
って言ったら、
そこまでは行かない。途中で待ってる。
とか訳わかんねー事言うし…。

休む所見付けようと歩いてたら
この洞窟があって…。
人が入って行くのが見えたから
何かあるのかなって付いて行った。

…絶対心細かったせいじゃないさ…。



―…目が覚めたら暖炉があって、
反対側向いたら小さい窓があって、
そこから随分高い青空が見えた。
だから「いま、いつ。」って言ったんだ。

そしたら嗄れた声が「秋だよ」
って答えた。

「…もう虫いねえじゃん…」

そう言ったら、知らないばーさんが
頭を撫ぜて来た。

いつもなら振り払うトコだけど、
今日は特別に許してやる…。



―――――――――

―ロルカはあの時一番にトロッコに入れた。―



「あち…。」

街の外れまで
彼女を追って来たノアールは
汗みどろだった。
かなぐり捨てる様に黒い半袖シャツを脱ぐ。



―…助け出されて
無事暮らしてるのは、
気が付いた後に
確かめに行ったから知ってた。

でもあの大戦の後の混乱で、
どっか別の国の親戚を頼って
この国を出たってのも調べて解ってた。―




「…それが何でだよ…
しかも逃げ足相変わらずはえーしよ…。」


ノアールは道に大の字になって
闇夜を見上げた。






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