空の表紙 −天上のエクレシア−
「あら。彼女にげちゃった」
オデッセイは
アクアスとノアールの戦いを
文字通り、高見の見物していた
二人の命に危険があれば
すぐ出ようと思ったが
あれ位なら
ノアールが居れば問題ないし
アクアスも途中からは
いい動きしてたから
何となく…
自分が出たらいけないと思った
ああ言う時が、オレにはなかったな
何でも出来たしね −
オレの生家
エヴァグラード家は
由緒正しい教会が密集する
海辺の街にある
早くから
外交貿易を行っていた街は
新しい風が常に流入し
独得な風俗文化を展開していた
そこでも屈指の財力と家柄を誇ってた
辻の馬車に
『エヴァグラード家まで』と言えば
道案内せずともそこに着く
そんな環境の中でオレは育った
学者もいる先祖の血
学園の試験でも常にトップ
そんなだから女にモテない訳が無い
この町に出て来てからも
常に賑やかな人の輪の中心に居た
仲間を引き連れて夜の街
喧嘩があれば顔を出す
金が無くなれば女が出した
軍に入ったのも声を掛けられたから
それだけ。
いいかげん
酒も抜かないとと思ってたしね――
ただ…
なんとなくいつも
自分じゃない何かに憧れてた
いや、自分は好きだけどさ
ただ…なんとなくいつも
淋しかった