空の表紙 −天上のエクレシア−



―――――――――



「悪い!遅くなった!」

アクアスは、はあはあと息を切らせ
砂音を立てて両足を大きく広げ
ルビナとサリュの前に立つ。


「ほんとに遅いよーーー!!」

ルビナは目の前の
あまりの出来事に半泣きしながら
アクアスを叩くが
怒りに顔を紅潮させて闇兵に向かい
震えながら、叫ぶ

ルビナのその胸には、
…瞳を閉じたままのユピがいた



「…酷いよ!
こんな小さい子にこんな事…
やっちゃえアクアスー!!!」


アクアスは唾を飲み込む。


…闇兵総数、多分三十人越え。

(あ〜…。多分死ぬな…俺…

数時間前なら「行けるっしょ。」
と呟いていたろう。

けれど
一回本当の戦闘をしてしまった今は
とてもじゃないが
そんな台詞は吐けない

人が『殺そう。』と向かう時の力は
計り知れないとアクアスは知った


ノアールはナイフしか無かったのに…
武器が良いとか悪いとかじゃないんだ…。

けど、今こっちに戦えるのは俺しかいない。

この場から皆を
今逃がすのも無理だ。
走れと言って行かせた所で
あっと言う間に捕まるだろう

…どこまでやれるか解らないけど、
やるしか無いんだ…。


アクアスは剣を構えて叫ぶ

「ルビナ…変な事すんなよ!」

「?! なに?!!」

−死ぬかもしれない。


けれど妙な高揚感に
アクアスの胸は震えていた





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