空の表紙 −天上のエクレシア−




―――――その頃、白兎は
塔を覆う闇深い森を抜け
明かりを燈す門の憲兵を無視し
城に向かって馬を走らせていた

(なぜ殺した…!!

とにかく…とにかく弟王に
お目通り願わなければ…





―――――――――



夜半に遡る。

フリートに誘われ
白兎は
転送輪で塔の地下に到着した


階段を上がり
床下から板戸を押し宿直室に入ると
数人の魔術士がいるのが見えた
なにやら必死に呪文を唱えている

フリートがそれらに微笑んで
声を掛けた

「ご苦労様でした皆さん。
もうお帰りになって宜しいですよ」


すると術士達は
おおいに慌てる。

「いや!もうすぐでこの謎が!」

「そうですとも!
私の術は非常に壮大な厳粛なる
技法故、もう少々時間が…!」

フリートは片手で
静かに扉を開けながら
もう一度微笑んだ。

「…報酬はそこの兵隊から
受け取って下さい。
何かあった時にはまた
お願い致しますね。」


『報酬』『また』と言う台詞で
術士達の顔色が変わる。

『また』と言うのは暗黙の
帰れという脅しだ

術士達は、いそいそと袋を受け取り去って行く



< 77 / 227 >

この作品をシェア

pagetop