神殺しのクロノスタシスⅣ
…すると。

「あぁ、良かった間に合いましたね」

「…ナジュ…!天音も…」

医務室にいたはずのナジュと天音が、この場に合流した。

天音はともかくとして、ナジュ、お前は…。

「馬鹿、大人しくしてろよ。体調悪いんだろうが」

「大丈夫ですよ」

始まった。

ナジュの「大丈夫」は、常人で言う「瀕死状態」と同意義だからな。

「本当に大丈夫ですって。天音さんのお陰で、頭痛も収まりましたし。若干倦怠感は残ってますが…」

「だったら寝てろよ」

「いや、爆弾と聞きつけたので、爆弾と来たら僕の出番かなーと」

…ピキッ。

「ふざけんなよお前…。またいざとなったら、爆弾抱えて自爆するつもりだろうが。ぶん殴るぞ」

「…冗談ですって…。そんな怒らないでくださいよ」

冗談に聞こえないんだよ。

何せお前には、幾度にも及ぶ「前科」があるからな。

「そもそもこの爆弾、魔法で作ったものじゃないんでしょう?なら、僕が庇うまでもなく、防御魔法で防げますよ」

それはそうだが、しかしそういう問題じゃない。

「…それに、この学院の一大事に、仮にも教師である僕だけ、寝てる訳にはいきません。って言うか寝られませんから。同席させてくださいよ」

「…」

…ズルいぞ、この野郎。

そう言われたら、無下に追い払えないじゃないか。

「…分かったよ。でも、読心魔法は使うなよ」

「はいはい。極力使いませんから」

極力って何だよ。全く使うな馬鹿野郎。

また倒れるようなことがあったら、今度こそふん縛って、ベッドに括り付けてやるからな。

「…で、改めて確認するんですけど」

と、ナジュが言った。

集められた、爆弾と盗聴器とカメラ…の、残骸を見て。

「これが、『サンクチュアリ』の残していった置き土産ですか」

「…そうだよ」

認めたくないが、認めない訳にはいかない。

「…」

ナジュは無言で、それらを見下ろし。

「…何だか、とても申し訳ないですね」

と、見当外れなことを言った。

は?

「僕が、もっと早く『サンクチュアリ』の工作員に気づいていれば…。未然に防ぐことがで、ぶほっ」

俺は、ナジュの口にハンカチを詰め込んでやった。

それ以上言うと、喉の奥まで詰め込むぞ。

「アホなこと言ってんじゃねぇ。一ミリもお前に責任はないし、責任の有無を問うなら、教員である俺達全員にある」

誰がお前一人のせいにするか。

それを言うなら、入場受付を担当していた俺と天音が、みすみす『サンクチュアリ』の偵察員を通してしまったことが、一番の責任だよ。

お前は訓練場で、体験授業担当だった。

校内を見て回ることも出来なかったし、体験授業希望者以外の来場者と接する機会は、ほとんどなかった。

そんな状況で、『サンクチュアリ』のスパイが潜り込んでいるなどと、どうして気づけるものか。

むしろ、お前はMVPなんだよ。

その限られた来場者の中から、ピンポイントで『サンクチュアリ』のスパイを見つけてくれた。

お前が見つけてくれなかったら、俺達は校内に爆弾が仕掛けられていることも、気づかなかったはずだ。

そうしたらどうなっていたか。想像するだけで、背筋が冷たくなる。

だから、お前は最悪の大惨事を防いだMVPとして、堂々と胸を張ってれば良いんだよ。

「自責の念に駆られている暇があったら、これからどうするかの対応策でも考えていなさい。その方が余程賢明というものです」

と、相変わらず辛辣なイレース。

しかし、彼女の言うことの方が正しい。

「…分かりましたよ」

これには、ナジュも苦笑して引き下がるしかなかった。

そう、それで良いんだよ。
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