神殺しのクロノスタシスⅣ
それだけではない。

俺は、肉まんが売り切れと聞いて、どうしたら良いのかを必死に考えていた。

いや、そんなこと考えなくても。

別に、見知らぬ他人の為の肉まんなんだし。

売り切れなら仕方ないんだから、「あ、そうですか」で済ませれば良い。

今日肉まんを食べなければ、彼が死んでしまうという訳でもなし。

それなのに俺は、必死に代案を考えていた。

「15分くらい待ってもらえたら、作りますけど…」

「あ、いえ…それなら、結構です…」

店員さんの申し出を、俺は却下した。

15分も待っていたら、学校に帰る頃には、昼休みが終わってしまうと思ったのだ。

昼休みが何時までなのか、知らないはずなのに。

と言うか、今は何時なんだ?

それすら分かってない。

「じゃあ、その…代わりに、あんまんください…」

俺は、反射的にそう口走っていた。

肉まんがないから、代わりにあんまんって、それはあまり代わりにはならないような気がしたが。

手ぶらで帰るよりは、何かあった方が良いと思ったのだ。

今までの経験で。

…今までの経験って、俺は彼らにパシリにされるのは、初めてのはずなのに。

何でこんな、熟練のパシラーみたいなことを考えているのか。

…パシラーって何だ?

「はーい。お会計こちらになりまーす」

相変わらず、あまり態度が良いとは言えない店員に、買ったものを袋に詰めてもらい。

店員さんは、値段の表示されたディスプレイを指差した。

あ、しまった。財布。

買いに来たのは良いが、俺、財布持ってたっけ…?

しかし、その心配は必要なかった。

俺は反射的に、制服のポケットに手を入れていた。

そこには、ちゃんと財布が入っていた。

あ、良かった。

俺は財布の中にあったお金で、会計を済ませ。

急いで学校へと戻った。

勿論、途中で俺が道に迷うことはなかった。
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