神殺しのクロノスタシスⅣ
俺が何も言わずに…と言うか。

何も言う気になれずに、黙っていると。

それを良いことに、母親は言いたい放題言い始めた。

「ガキなんて欲しくなかったけどさぁ…。生まれたからしょうがないし。まぁ中学卒業したら働いてくれるから良いやって思って、仕方なく育てたのにさぁ…」

…。

「弟が勝手に持っていって、おまけに高校進学なんて、余計なことさせて…。そんなの一銭にもならないんだから、やめさせれば良いのに…」

…この人。
 
この人にとって、俺は、厄介なお荷物で。

でもある程度育てたら、自分が遊ぶ為の金を作ってくれる存在だと思っていたのに。

自分の弟、つまり俺にとっての叔父さんが、俺を引き取ったから。

その計画がおじゃんになって、随分不満であるらしい。

「高校なんかどうでも良いから、さっさと戻ってきて、働きに出てくれないかなぁ?弟だって、あんたなんか邪魔に決まってるよ」

そして今に至っても、まだ諦めきれず、学校をやめるよう言ってくる。

…酷い母親だ。

同情の余地もない。

「はぁ…。こんなことだったら、やっぱり産まなきゃ良かったなぁ…」

聞くに耐えない、酷い言葉だが。

湧き立っている頭の中とは裏腹に、身体は静かだった。

まるで、そんなことは言われ慣れているから、今更動揺なんかしない、と言わんばかりに。

実際俺は、こんな風にずっと言われながら、ここで育ったのだ。

やっぱり記憶にはないけれど、そんな気がしている。

可哀想、だと思った。

この人が、じゃない。

この身体の…俺じゃない…本来の持ち主。

身体が記憶している、本来のこの身体の持ち主が、いるはずだ。

俺はその人の記憶を、追体験させられているのだろう。恐らく。

だから、俺には記憶にないことばかりなのに、身体だけは覚えている。





…あなたは、こんなものを見せて。

俺に、一体何を伝えたいんですか?




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