神殺しのクロノスタシスⅣ
考えれば考えるほど、疑問は尽きないが。

まず一番に聞きたいのは、ここが何処かってことだ。

俺がもといた世界…ではないのは、確かだ。

そう感じるのだ。ここは、俺の世界じゃないって。

ついでに言うと、この身体。

一応、動かそうと思えば、俺の意思で動かせる部分もある。

例えば、ちょっと頭を掻いたり、落とした消しゴムを拾ったり。

それくらいの動作なら、「許されて」いる。

「今すぐここから飛び出して、この世界を探索に行くぜ!」みたいな。

大胆な行動は許されていないらしく、身体が動かないが。

あと、気になるのは魔法だ。

昨日のくそったれな両親から聞くに、どうやらこの世界にも、魔導化学や魔法の概念は存在しているようだ。

それなのに、俺は魔法が使えない。

この世界に来てから俺は、魔法が一切使えないのだ。

両親は、再三俺に「魔導適性がない」と言っていた。

魔法が使えないのは、そのせいだろうか。

でも、それはおかしい。

本来の俺が持つ、魔力も魔導適性も…俺の身体ではなく、魂に宿るもの。

魔力も魔導適性も、キュレム・エフェメラルという「人格」に備わっているものだ。

現在の俺の状況は、身体は俺の言うことを聞かない、全くの別人でも。

中身、つまり人格は、キュレム・エフェメラルのものだ。

俺が今こうして、本来の持ち主なら考えるはずがないことを、当たり前のように考えているのもそう。

俺は俺だから。人格は、魂は、キュレムのものだから。

いくら身体が変わろうと、俺の意志はちゃんと存在する。

つまり、俺の人格に生まれつき備わった魔力や魔導適性は、変わらず備わっていなければならないのだ。

魔導適性がないって言われてんのは、この身体のもとの持ち主だろう?

俺じゃない。

この身体の持ち主さんには悪いが、俺はあんたとは違うのだ。

身体、入れ物は関係ない。俺という人格が身体に宿る限り、俺は魔法が使えなければならない。

それなのに、使えない。

使おうとしても、何も起きないのだ。

ここが何処なのか、何でこんな状況に陥ったのかも気になるけれど。

一番はやはり、これだ。

魔法が使えない。

これが、一番の不安要素だ。

魔導師なのに、魔法が使えない。ここが何処なのか、どういう状況なのかも分からないのに、俺は非力な一般人なのだ。

魔法という、俺にとって唯一とも言える武器を奪われて。

俺はどうやって、もとの世界に戻れば良いんだ?
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