神殺しのクロノスタシスⅣ
案の定。
俺の予想通り、俺の身体は勝手に巡回してくれていた。
患者の容態を聞いて回ったり、血圧や体温を測ったり、点滴の袋を取り替えたり。
俺にはよく分からない機械を、当たり前のように手を動かして使っていた。
本当に、自分の身体じゃないようだ。
勝手に動く。
如何せん俺には看護師の知識がない為、身体が勝手に動いてくれるのは有り難い。
…いや、有り難くはないか。
何せ、俺はこんなことをしている場合ではないのだ。
何があって、俺が看護師などやっているのかは知らないが。
俺には、他にやるべきことがある。
それなのに、俺の身体は自由に動いてくれない。
看護師としての仕事は、テキパキこなしているが。
それ以外のことが出来ない。
俺がどんなに、白衣を脱いで外に出たい、外の様子を見に行きたいと思っても、身体がそれを許さない。
非常に不便だ。
俺は、こんなことをしている場合じゃないのだが…。
そう思いながら、俺の足は、俺の意志に反して。
一つの個室部屋の前で、足を止めた。
…ここは…。
部屋の前についている、名前のプレートを見る。
この名前、先程ミーティングで、囲んでいたカルテに書いてあった名前だ。
後輩の青年が、夜に訪ねてみようと言った者がいる部屋。
俺は、その病室の扉を開けた。
一歩中に入ると。
「あっ!お兄さん、いらっしゃい」
ベッドの上で、クレヨンを片手に絵を描いていた少女が、嬉しそうにこちらを向いた。
この少女が…先程の…。
まだ年端も行かない、本当なら青空の下で駆け回っているような年頃の子供。
しかし彼女は、カルテに書いてあった年齢よりも、ずっと幼く見えた。
身体は小さく、そして細かった。
まるで枯れ枝のような腕に、点滴の針が刺さっていた。
それでも、少女は笑顔だった。
俺の姿を認めるなり、クレヨンを置いて、画用紙を裏返しにした。
「…?今、何を隠したんだ?」
見られたら困るようなものでも?
「えへへ。今、お兄さんの似顔絵描いてたんです。完成するまで、見せてあげません」
少女は照れ臭そうに言った。
成程、そういうことだったか。
ならば、深く聞かない方が良いだろうな。
俺の予想通り、俺の身体は勝手に巡回してくれていた。
患者の容態を聞いて回ったり、血圧や体温を測ったり、点滴の袋を取り替えたり。
俺にはよく分からない機械を、当たり前のように手を動かして使っていた。
本当に、自分の身体じゃないようだ。
勝手に動く。
如何せん俺には看護師の知識がない為、身体が勝手に動いてくれるのは有り難い。
…いや、有り難くはないか。
何せ、俺はこんなことをしている場合ではないのだ。
何があって、俺が看護師などやっているのかは知らないが。
俺には、他にやるべきことがある。
それなのに、俺の身体は自由に動いてくれない。
看護師としての仕事は、テキパキこなしているが。
それ以外のことが出来ない。
俺がどんなに、白衣を脱いで外に出たい、外の様子を見に行きたいと思っても、身体がそれを許さない。
非常に不便だ。
俺は、こんなことをしている場合じゃないのだが…。
そう思いながら、俺の足は、俺の意志に反して。
一つの個室部屋の前で、足を止めた。
…ここは…。
部屋の前についている、名前のプレートを見る。
この名前、先程ミーティングで、囲んでいたカルテに書いてあった名前だ。
後輩の青年が、夜に訪ねてみようと言った者がいる部屋。
俺は、その病室の扉を開けた。
一歩中に入ると。
「あっ!お兄さん、いらっしゃい」
ベッドの上で、クレヨンを片手に絵を描いていた少女が、嬉しそうにこちらを向いた。
この少女が…先程の…。
まだ年端も行かない、本当なら青空の下で駆け回っているような年頃の子供。
しかし彼女は、カルテに書いてあった年齢よりも、ずっと幼く見えた。
身体は小さく、そして細かった。
まるで枯れ枝のような腕に、点滴の針が刺さっていた。
それでも、少女は笑顔だった。
俺の姿を認めるなり、クレヨンを置いて、画用紙を裏返しにした。
「…?今、何を隠したんだ?」
見られたら困るようなものでも?
「えへへ。今、お兄さんの似顔絵描いてたんです。完成するまで、見せてあげません」
少女は照れ臭そうに言った。
成程、そういうことだったか。
ならば、深く聞かない方が良いだろうな。