神殺しのクロノスタシスⅣ
まずは、今日の経緯から話そう…と、思っていたのだが。

「成程、シャネオンに着いたら、聖魔騎士団から派遣された魔導部隊大隊長二人と偶然合流。線路が何者かに爆破されていて、その何者かは、最近謎の活発化を見せている、魔導師排斥論者の仕業だったんですね」

「…そうだよ」

ナジュが、俺とシルナの心を読んで、説明するまでもなく要約しやがった。

ご苦労さん。余計なお世話だこの野郎。

丁寧に訳してくれやがって。

「そ、それはまた…。えぇと…情報量過多で、大変ですね…」

と、天音。

本当にな。だから順を追って説明しようとしたのに。

この読心魔法教師が、一気に全部喋りやがった。

「魔導師排斥論者の仕業…?一体何事があって、そんな連中が駅爆破なんかするんです」

イレースは、眉をひそめて言った。

彼女の中で、その言葉が引っ掛かったらしい。

何にせよ、自分の立てた完璧な授業計画を台無しにした者は、誰であっても許さないというスタイルだな。分かる。

お前はそういう奴だよ。

「さぁ、どういう意図があってやったのかは…。少なくとも、犯行の時間帯を考えても、誰かを殺したかった訳ではないみたいだね」

「殺さなかったら、人様に大迷惑をかけて良いとでも?全く、腹の立つ連中です」

おぉ怖っ。

魔導師排斥論者の連中の前に、イレースを一人連れてきたら、あまりの恐ろしさに手出し出来なさそうだな。

「しかし、その辺ルーデュニアは緩いと思ってたのに、そうでもないんですねぇ」

と、ナジュが言った。

緩い?何が?

「だって、僕がルーデュニアに来てから、魔導師排斥運動なんて、聞いたことありませんよ。ルーデュニアは比較的、魔導師に寛大な国だと思ってたのに」

それは…。

「僕も、同じことを思った。色んな国を回ってきたけど、ルーデュニアはかなり、魔導師に優しい国だよね」

と、ナジュと同じく、各地を回ってきた経験のある天音が言った。

「全くですよ。僕が生まれた国なんて、魔導師と非魔導師が、血で血を洗う戦争してたくらいですよ。それを思えば…」

「うん。僕も、そんな国を見たことがある。そういう国の魔導師は、優遇どころか、酷く虐げられて…。居心地が悪かったから、僕はすぐに出ていったけど…」

二人は、続けて言った。

…まぁ、そういう国もあるよな。

むしろ、ナジュの言う通り、ルーデュニア聖王国が、特別魔導師に寛大な国なのだ。

これが他の国だと、そうはいかない。
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