神殺しのクロノスタシスⅣ
「存在しない…?」

「あぁ。異次元世界へと繋がる、門の役割を果たしていた石は、既にこの中に戻されている」

珠蓮は、一つに戻った賢者の石を指差した。

あぁ、あの赤い水晶玉みたいな奴か。

「ってことは…足りないもう一個の欠片は…」

「恐らく、『サンクチュアリ』がまだ持っているのだろう」

「…あいつら…」

まだ持ってるのか。いい加減返せよ。

つまり俺達は、シルナの憶測から、勝手に賢者の石は十個の欠片に分けられている、と思っていたが。

本当は、11個だったんだな。

そして残りの一個は、まだ『サンクチュアリ』が持っている可能性が高い、と…。

成程。悠長にはしていられないな。

たった一個でも、賢者の石は、俺達の想像を遥かに越える力を持っている。

それを、『サンクチュアリ』の手に渡す訳にはいかない。

今頃どんな悪さを企んでるか、分かったもんじゃない。

「問題は、『サンクチュアリ』の新しいアジトを、どうやって突き止めるかだ」

と、珠蓮が言った。

悩ましげな表情で。

「賢者の石という切り札をなくした以上、『サンクチュアリ』も慎重になっているだろう…。前回のように、簡単に尻尾を掴ませてはくれないはずだ。これをどうやって探すか…」

成程な。

俺達の、いや、聖魔騎士団魔導部隊のことを知らなければ、そんな考えになるのも当然だな。

実はその点俺達にとっては、全然脅威ではない。

「それについては大丈夫だ、珠蓮」

「…何?」

「何せこっちには、超優秀な探索魔法の使い手がいるからな」

俺は、我ながら不敵な笑みを浮かべて言った。

彼の手にかかれば、きっと今頃…。
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