神殺しのクロノスタシスⅣ
Ⅱ〜後編〜
そして、辿り着いたオーネラント宅。

この家に来るのは、これで二度目だな。

二階を見上げてみたが、やはりカーテンは閉め切られ、エヴェリナの姿は見えなかった。

でも、多分あの部屋にいるんだよな…。

自分の運命はどうなってしまうのかと、不安を抱えながら…。

…心配するな。絶対、俺達が何とかしてやるからな。

「…格好良いこと言いますね」

「言ってねぇから。勝手に心を読んで、言ったことにするな」

これだから、ナジュ同伴は嫌だよ。

「さぁて、じゃあ押しますかー」

と、ナジュは躊躇なくインターホンを押す。

これで留守でした、とかだったら嫌だけど。

幸い、ちゃんとドアが開いた。

「…どちら様ですか?」

出てきたのは、不機嫌そうな顔の中年女性。

エヴェリナ母である。

惜しい。これがエヴェリナ父だったなら、ワンチャン快く家に上げてくれたかもしれないのに。

父親の方が、気性が穏やかそうだったから。

しかし、ナジュは気にしない。

「こんにちは、奥さん。いやぁ、突然お訪ねして済みません」

にこりと、人の良い笑みを浮かべてそう言った。

傍目から見れば、好青年に見えるのだろうが。

俺は、こいつの本性を知っているせいか、めちゃくちゃ胡散臭く見えた。

こういう奴が詐欺師になるんだよ。

「あぁ…はい」

イケメンカリスマ教師を自称するだけあって、ナジュの笑顔は、それなりに効果的だったようで。

エヴェリナ母は、少し扉を開けた。

どうやら門前払いはされそうもない…か?

ってか、ナジュの悪どい笑顔に騙されるなよ。

詐欺師だって絶対。

そしてナジュは、扉が充分開かれたのを確認してから。

「実は僕は、イーニシュフェルト魔導学院から来たんですが」

ようやく、身分を明かした。

若干心を開きかけていたエヴェリナ母は、それを聞いて顔を堅くした。

ヤバいか、と思ったが、しかし扉を開けてしまった手前、バンと閉じるようなことはしなかった。

相手に扉を開けさせてから、身分を明かすとは。

ナジュ、マジで詐欺師説。

しかし、今はそれが見事に刺さってるぞ。
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