神殺しのクロノスタシスⅣ
「何を勝手に決めてるんだよ。俺達は、見知らぬ棺桶を開けただけだろ?何で、いきなりお前達の白雪姫プロジェクトに協力させられなきゃならないんだ!?」

つまり、契約を履行出来なければイレースが死ぬってことだろ?

冗談じゃない。

しかし。

「だって、蓋を開けてしまったんだから仕方ない」

「僕達は助かったけどね。お陰で、眠ったままの白雪姫を目覚めさせることが出来る」

こいつ、飄々として。

マジでふざけんじゃねぇぞ。

「契約を解除出来ないのか!?」

「一度蓋を開けたからには、封印は解かれてしまったからね。いくら封印し直しても、僕達は消えないよ」

「それに、七日の期限はもう始まってるんだ。力ずくで僕達を壊しても、契約者のその子が死ぬだけさ」

「っ…!」

こいつら…本当に…!

ふざけやがって…!

イレースが…イレースが死ぬ、だと…?

「落ち着いて、羽久。大丈夫だよ」

「この状況の、何が大丈夫なんだよ!?」

俺は、思わずシルナに逆ギレしていた。

冗談じゃない。

俺達は、園芸部の畑の下から出てきたという謎の棺桶を拾って。

念の為にと、蓋を開けて中身を確かめてみただけだ。

そうしたら、いきなり契約だの白雪姫だの。

意味の分からない魔法道具が出てきて、挙げ句に仲間を人質に取られ、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている。

冗談じゃない。冗談じゃないぞ。

「こんな魔法道具があるかよ!?笑えないにも程があるぞ!」

「それについては、言い返す言葉もないけど…。イーニシュフェルトの里では、こういった類の魔法道具も作られていたんだ」

「何の為にだよ!?誰が得するんだ!?」

「勿論、里の賢者が得をする為だよ。こういう…一種の『兵器』を作ることで、里の外を牽制し、周囲から距離を取ろうとしていたんだ」

「…」

「怪しげな研究をしていれば、里の外の者は、里に近づこうとしない。実際、里に近づこうとした者を、こんな魔法道具を使って追い返したりしてたんだ」

…その為に…こんなものを…。

別にシルナが作ったものじゃない。シルナの意志で作ったものじゃない。それは分かってるけど…。

「…そんなものが、何でいきなり現れたんだよ?」

「それは…分からない。里が滅亡するに当たって、封印されていたはずなんだけど…」

だよな?

でなきゃ、もっと早くに出土してるよな。

何で今、こんな図ったようなタイミングで現れるのか。

「もしかしたら…賢者の石の封印が解かれたことが、影響しているのかもしれない」

と、シルナが言った。
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