神殺しのクロノスタシスⅣ
賢者の石、だと…?

何故、その遺産が今関係あるのだ。

「賢者の石と、この陰湿な魔法道具と、何の関係がある?」

「直接的な関係はないと思う。だけど…賢者の石という、堅く封印されていたものが、この時代に封印が解かれて…他の封印にも影響が出たんじゃないかと思う」

賢者の石の封印が解かれ、それが連鎖反応を起こし。

賢者の石じゃない、別の封印…イーニシュフェルトの里時代の遺産…に影響を及ぼした。

そうだって言うのか。

「元々、賢者の石以外の封印は、それほど厳重に封印されていた訳じゃないんだ」

何だと?

「こんな、人を殺すような陰湿な魔法道具が…。簡単に封じられてたって言うのか」

「当時の基準からすれば、大した魔法道具じゃなかったんだよ。イーニシュフェルトの里の賢者からしたら…」

畜生、そういうことかよ。

あくまでも里の賢者目線では、こんな魔法道具は、軽いお遊び感覚だったって?

名前も、やたらメルヘンな白雪姫だもんな。

人の生き死にが懸かってるのに、ふざけてんじゃねぇぞ。

「とにかく、この『白雪姫と七人の小人』を無効化し、再び封印する為には…僕達がこの小人達の要求に、素直に応えるしかないってことですか」

と、ナジュが聞いた。

「そうなるね。…現状、それしか方法はない」

シルナが、沈鬱な面持ちで答える。

…こいつの悪ふざけに、付き合ってやるしかないってことかよ。

ますます、冗談じゃない。

しかし。

「この手の魔法道具は、確かに…羽久が苛立つのも分かるけど、でも逆に言えば、向こうの提示する『条件』を呑んで、円滑に攻略すれば、無害なんだ」

無害だと。

既に害を被ってる気分だが?

「向こうの提示した『条件』を無視して、下手に逆らったりしたら…それこそ、何をされるか分からない。被害を被るのは、イレースちゃんだけじゃ済まないかもしれないんだ」

…。

「…それは、この小人を全員殺しても無駄だってこと?」

令月が、けろっとして聞いた。

そうだな。

このムカつくおっさん小人を全員殺して、それで解決するなら。
 
とっくに実行に移してる。

…が。

「そうだね。殺しても無駄…と言うか、これらは玩具なんだから、命はない。殺しても無駄だよ」

「成程…」

殺したり、壊したりして解決する問題ではない、と。

それどころか、そんな「ルール違反」を犯したら、危ないのはこっちだと。

なんて忌々しい魔法道具だ。

「こうなったら…小人達の要求に従うしかない。白雪姫を目覚めさせたら、この子達はそれで満足なはずだ」 

「そうだよ。君も、物分かりが良いね」

小人が、へらへらとしながら言った。

やっぱりムカつく。

「僕達は白雪姫を目覚めさせる。その為に君達に協力してもらう。ちゃんと協力してくれたら、君達を殺すことはないよ」

「だから、ちゃんと従ってね。…死なたくなかったら、ね」

にやにやと、上から目線の言葉を喋る小人を。

俺は、脳内で思いっきり張り倒した。
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