神殺しのクロノスタシスⅣ
今度は、赤い服を着た「怒り」の小人。

そして、対象的に青い服を着た、「悲しみ」の小人が。

それぞれ、空っぽの小瓶を持って現れた。

そろそろ来るだろうと思ってたから、そんなに驚きはしない…つもりだったが。

やはり、いざ目の前に現れると…。

…やっぱりムカつくな。

こいつらは、俺を腹立させる天才だよ。

この時点で、もう既に「怒り」なら充分教えられる気がする。

「ほう、やっと来ましたか…。良いですね、怒りと悲しみ。僕はどっちでも良いですよ」

「う、うん…。契約…望むところだ」

いつ小人が出てきても良いように、棺桶の傍に控えていたナジュと天音が、小人の前に出る。

そして。

「我々がいることも、お忘れなきよう」

「僕と契約しても良いよ」

同じく棺桶の傍に控えていた、聖魔騎士団魔導部隊大隊長の、クュルナもエリュティアも同様だ。

ついでに言うなら、俺もな。

かかってこい。

「ふーん…。君達威勢が良いね〜」

「誰にしようかな?」

怒りと悲しみの小人は、しばし俺達を品定めするように眺めた後。

「よしっ、僕は君にするよ」

「僕は君に決めた!」

まるで、今晩の献立でも決めるかのような軽いノリで。

クュルナとエリュティアの指に、茨の指輪が巻き付けられた。

赤い服の、怒りの小人がクュルナに。

青い服の、悲しみの小人がエリュティアに。

七日後に迫った、死の刻限。

…こいつら…!

「おい、今度は何をさせるつもりだ?」

のっけから、俺は喧嘩腰だった。

怒りを教えろ、悲しみを教えろと言うなら話は早い。

とりあえず、逆さに宙吊りにして振りまくってやる。

そうすれば、怒りも悲しみも感じるだろう。

と、俺はなかなかに過激なことを考えていたが。

「何をすれば良いんですか、私は」

「悲しみって…どう教えたら良いの?」

契約を交わした当人である、クュルナとエリュティアは、意外と冷静であった。

騒いでいるのは俺だけか。

すると。

「君達は、何もしなくて良いんだよ」

「そうそう。ただ、感じてくれれば良いんだ」

「君は、怒りを」

「君は、悲しみを」

「それぞれ感じてくれれば、勝手に瓶はいっぱいになる」

「七日間、ずっとね」

小人共は、交互にこう説明した。

それだけでも充分ムカつくが。

七日間…ずっと、だと?
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