神殺しのクロノスタシスⅣ
棺桶が。

さっき瞬着で固めたはずの、棺桶の蓋の隙間から。

ボタボタと血を流すように、色んな色の液体が垂れていた。

黒、黄色、赤、青、オレンジ、紫…。

これまで契約してきた小人が溜めていた、感情の色。

その中に、水色だけはなかった。

俺が強制送還させたんだから、当然だが。

ちょ、あれ何なんだ?

液漏れ?

「な、何だ?あれ…」

「わ、分からないけど…。た、ただ事じゃ、ない…よね?」

う、うん…。

なんかヤバい、事件の香りがするんだが?

と、思っていると今度は。

ガタガタガタ、と棺桶が小刻みに痙攣を始めた。

!?

ポルターガイスト?

「や、やっぱりただ事じゃないよね!?」

シルナパニック。

「な、何だ?瞬着で蓋したこと、怒ってんのか?」

せめて糊にしろよ、とか?

いや、そんなふざけてる場合じゃないよな。

明らかに、敵意のある何かを感じる。

「シルナ・エインリー。先程、この『白雪姫と七人の小人』が暴走したと話していたが、あれは事実か?」

珠蓮が、素早く臨戦態勢を取りながら聞いた。

あぁ。それ俺も聞きたかった。

「う、うん。昔…。私は立ち会ってないんだけど、確か…これで遊んだ里の子供達が、白雪姫に襲われた、って…」

白雪姫に…襲われた?

白雪姫って、そんなことするの?

だって白雪姫と言えば、童話に出てくるか弱いお姫様で…。

「しかも、これまで契約した人物の魔法は一切、」

と、シルナが説明しかけたとき。

ガタガタと痙攣していた棺桶の蓋が、ガコンッ、と床に落ちた。

…。

…剥がれたぞ?蓋…。

封印失敗。

ちょ…もう一回蓋しても良いか?

もう無理か?もう蓋しても無理?

でもさ、シルナはそう言うけど、でも白雪姫だろ?

白雪姫と言えば、美人で綺麗なか弱いお姫様、

と、ここまで考えたそのとき。

ガコンッ、ガコンッと音がして、棺桶から腕が伸びてきた。

「ひいっ」

シルナびっくり。

…ゾンビ?

にゅっと伸びた片腕が、空を掴むようにして蠢き。

片方だった腕が、もう一本伸びて両腕になった。

う…。

…動いてる。

動いてるよな?人形だったはずなのに…。

眠っている玩具の人形が、何で動き出すんだ?
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