神殺しのクロノスタシスⅣ
第二部Ⅶ
――――――…。

「…ん…」

深い泉の底から浮き上がって、久し振りに陽の光を浴びるような。そんな気分。

それこそ、長い封印から目を覚ましたような感覚。

あぁ、またかと俺は思った。

俺は、また…「入れ替わって」たのか。

「…シルナ…」

「羽久?…羽久かい?」

シルナの声がする。

ってことは、シルナも…無事だったのか。

そもそも俺は…何をやってたんだっけ…?

何だか身体がダルくて…何も思い出せな、

ん?

…そうだ、俺、さっきまで。

白雪姫の化け物と…戦ってなかったか?

あの白雪姫はどうなった?

「シルナ…!あいつ、白雪姫どうなっ…っ…」

「ちょ、羽久!起き上がっちゃ駄目だよ」

勢いよく起き上がって、そして後悔した。

凄まじい倦怠感と、内臓が傷ついたことによる痛み。

出血したせいか、入れ替わっていたせいか…頭がふらふらする。

「さっきまで回復魔法かけてたけど、でも完治はしてないから。まだ起き上がっちゃ駄目」

「…あぁ…」

俺も後悔したところだよ。

あの白雪姫…よくもやってくれた。

すると。

「軟弱ですね。ちょっとばかり内臓が潰れただけで」

「…ナジュ…」

服が血まみれになっているナジュが、けろっとした顔を覗かせた。

お前…無事だったか。

あと…お前の常識がおかしいだけで、普通の人間は、内臓が潰れたら動けないんだよ。

「ナジュ君も無理しちゃ駄目なんだよ…。肺の方まで抉られてたんだから…」

ナジュの後ろから、天音が苦言を呈していた。

あぁ、天音も無事だったんだな。

ってことは…。

「ようやく起きましたか」

「羽久なの?これ羽久?」

「ふつーに喋ってるし、羽久せんせーなんじゃない?」

イレース、令月、すぐりの三人が、揃って姿を現した。

良かった。やっぱりお前らも無事だったか。

そして。

「無事で何より」

「…珠蓮…」

お前が、皆を守ってくれてたんだよな。

ありがとう。

ともかく、全員が無事なようで…安心した。
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