神殺しのクロノスタシスⅣ
この日は、生徒達にとっても作文の発表会だった。

生徒達が頑張ったんだから、俺達教師も頑張らないとなぁ?

示しがつかないってもんだよ。

「皆さん、それぞれ手元に原稿用紙は戻ってきましたね?」

発表会進行役のイレースが言った。

「では、一人ずつ発表していきましょう」

「誰から発表するんだ?」

トップバッターは遠慮したい…と思っているのだが?

「そこは公正に、くじ引きで」

うわぁ。

こういうときに限って、一番当たりたくない順番に当たってしまうんだよな…。

すると。

「まず最初は…。…羽久さんですね」

ほらな。

イレースが箱に手を突っ込み、最初に出てきたのが、俺の名前が書かれた紙切れだった。

当たりたくないと思ってた傍から、これだよ。

「羽久頑張ってー」

「まぁ、最初に発表しておいたら、後は楽ですよ」

そうなんだけどさ。

それはそうなんだけど。

でも、だからって一番は嫌だろ。

まぁ、くじ引きで…引いてしまったんだから、どうしようもないけどさ。

「羽久さんのことですから、それはもう世界を揺るがすような、途方も無い夢をお持ちに違いないですね」

おい、何だよそれは。

勝手にハードルを上げるな。

「言っとくが、大した内容じゃないからな?そんなに期待するなよ」

「とか言う人が、一番壮大な夢を抱いて…」
 
「俺の夢…と言うか理想は、このままイーニシュフェルト魔導学院と、聖魔騎士団と…ルーデュニア聖王国が、平和であることだ」

「…なーんだ。案外普通ですね」

ほら見たことか。

勝手にハードル上げるから、そういうことになるんだ。

俺もちょっと気まずいじゃないかよ。どうしてくれるんだこの空気。
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