神殺しのクロノスタシスⅣ
「ここまでやれば、生徒達は厳格に勉強に臨む、素晴らしい生徒に育つことでしょう」

出るわ出るわ、イレースの大改革法案。

これが全て実行に移されたら、イーニシュフェルト魔導学院は、本当に大改革が起こるな。

学院創立以来の大改革だ。

それってもう、イーニシュフェルト魔導学院って言うより。
 
鬼教官イレース魔導学院って感じ。

そんな学校には…入りたくないなぁ…。

…ってか、生徒の授業の時間が増えたら、俺達教師の仕事の時間も増えるのだが?

「こ、こ、怖いね…。そんなことになったら…」

シルナと同じく、青ざめて震える天音。

「そんなに授業ばっかしてたら、リリスとイチャつく時間がなくなるじゃないですか」

ナジュも不満顔である。

嫌なのはそこかよ。

そして、学院長であるシルナは。

「…」

無言で、ぶるぶる震えていた。

おい頑張れよ。今お前が反対しないと、マジで来年度から、イレース魔導学院になるぞ。

笑えないんだけど。

すると。

「…反対」

シルナが、ポツリと呟いた。

「反対、反対、はんたーい!!イーニシュフェルト魔導学院は、厳粛に伝統を遵守します!」

伝統を遵守、と言えば聞こえは良いが。

ようは、この現状のゆるゆる〜っとしたイーニシュフェルト魔導学院の在り方を、これからも維持したいと。

まぁ、お前はそうだろうよ。

「勉強ばっかりしてちゃ駄目だ!イーニシュフェルト魔導学院では!自由な時間をたっぷり取ることで、規定概念に囚われない自由な発想を養うんだ!」

物は言いよう。

「そんな訳で、イレースちゃん案は破棄!決定!」

めちゃくちゃ冷や汗かいてるぞ。

ここで阻止しないと、イーニシュフェルト魔導学院がイレース色に染まってしまう。

「次!次!次行こう!次どっち!?私!?ナジュ君!?」

挙げ句の果てに、さっさと次の発表に逃げることで、イレース案を流そうとしている。

姑息だなぁ…。

「ちょっと待ちなさい。私の発表はまだ終わってませんよ。今のは原稿用紙8枚分です」

まだ、あと300枚分くらいは残ってそうだな。

しかし、何としてもイーニシュフェルト魔導学院を現状維持したいシルナは。

「じゃあ次、くじ引きまーす」

強引にくじを引くことで、イレースの改革案を無理矢理却下。

やっぱり姑息だなぁ…。

「えーと、次は…ナジュ君が先だね」

「おっと、僕の出番ですか。良いですよ」

「ちっ。私の、イーニシュフェルト魔導学院大改革案が…」

残念だったな、イレース。

その大改革案は、次の機会に持ち越しだ。

…次の機会があるのかは、不明だが。
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