陰謀のための結婚
母はお椀を私の前に置いた。それは具沢山の味噌汁。
どんなに忙しくても野菜だけはと、栄養面を気にして、よく作ってくれた。私の一番好きな母の味。
入っている野菜は冷蔵庫の残り物で、いつも違うのに、母の温かさは変わらなかった。
「お味噌汁とご飯だけの夕食もあったわよね。それでも香澄は『お母さんのお味噌汁大好き』って言ってくれて。今度は香澄が、彼に作ってあげたら」
母は声を詰まらせつつも、晴れやかな顔をしている。
「でも、私は……」
彼とは住む世界が違い過ぎて、それに一番は私では彼との子どもを望めない。
なにを言い淀んでいるのか、母はわかっていて、それについても母は話し始めた。
「言わなければいけない話もして、それでダメだったら、それまでのご縁。もしかしたら、彼ならふたりで生きていく道を選んでくれるかもしれない。それに」
私は首を振って、母の話を遮る。
「彼が私を選んだために、彼が受け取るはずの人生を奪えないわ」