陰謀のための結婚

 待合室に行くと、彼は大勢の女性がいる中で静かに待っていた。日曜も診察している女医の産婦人科は、人気なのだろう。

 それを急患で診てもらったのに、実は病気でもなんでもなかったなんて、色々と申し訳なさが込み上げる。

「すみません。あの、お騒がせした上に、ご迷惑をおかけして」

「大丈夫だから」

 彼は言葉少なに、返事をして黙ってしまった。

 会計を済ませ、彼に連れられるまま駐車場の彼の車にたどり着く。

「あの、ごめんなさい。車、汚れませんでしたか」

「大丈夫だから」

 彼は『大丈夫だから』しか言わない。

 そして、助手席のドアを開けられるまま乗り込んだ。
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